後藤さゆり/池下 理都子
かしこくなりたい一心で手術を受ける。
が、上がった知能が戻ってしまうことがわかり…。


シアワセというものを考えてみたりします。
人を疑わないココロ、愛されてることを受け止められる能力、だからこそ愛に包まれている状態…。それは猜疑心と警戒心をスタンバイさせたまま他人とつき合うようになった僕らの対極にあるものです。
一方、どんな時代でもどんな状況でもシアワセはなくなるわけではなさそうです。だとしたら、21世紀の日本に生きる僕らにもシアワセは両手を広げて待ってくれているかもしれないと言えるわけで…。

といったものを池下は背負います。緻密な計算とその計算を凌駕する感情をもって。きっとこの舞台を目にする方は、彼女の一挙手一投足から目を離せない自分を見つけるでしょう。想像を絶する物語を生きる女優を、ぜひお楽しみください。


大野将樹/山崎 修一
脳内神経活性プロジェクトの研究員。
被験者であったはずのさゆりと恋に堕ちるが…。


将樹のテーマはただ一つ、「どう愛するか」です。
大切に想っていた恋愛を無くしてしまったあとには恋愛恐怖症にならなければいけないのか、と思うほど「繊細」な人にたくさん会ってきました。日常の暮らしの中で「繊細」には見えないタイプの人までそうなのです(笑)。
だけど傷つくことと不幸とは次元が違うはずです。さゆりの状況が単純に不幸とは言えないように、将樹の失恋も単純な哀しみとは違うのです。

山崎修一は元来持っている人の良さで将樹の状況と立ち向かいます。逃げたくなる気持ちを、向き合う覚悟で押さえ付けます。そこに生まれる切なさ、それをぜひ目撃してください。その切なさこそが今回の物語のキモですから。


悦子おばさん/杉本 ヒロ子
さゆりの働くケーキ屋の店長。
さゆりをわが子のように可愛がっている。


周囲の反対にあいながらも、決心を曲げず、さゆりを引き取り育てて14年。まさか、自分からさゆりを手放す日が来るとは…。という役どころです。情が深くて、マイペースで、だからこそ人を安心させる。

そんな悦子の持ち味はそのまま杉本ヒロ子そのものです。自分の未熟さも呑み込んで、その上で他人を受け入れる覚悟がなければ、温かさは生まれません。ヒロ子の「向き合う力」をぜひ堪能ください。


和葉/泉 幸江
さゆりの唯一の肉親、妹。
小さい時からさゆりのことを憎んでる。


親の愛情がすべて姉・さゆりに向けられていたと思い込んだ妹・和葉。うまくいかないことを人のせいにして自分を守る手を人はよく使います、そうとは気づかずに。姉妹・兄弟という関係も一度こじれ出すと、もともと近い存在だから愛も憎しみもより濃くなるようです。愛と憎しみの葛藤のすえに和葉がさゆりにかける言葉…こんなに癒される、力のある言葉はあるのかっていうくらいのセリフです。

素直な愛を見失ってしまった? 泉幸江の持つ、和葉の素質は120%以上(笑)。本番では泉にしかできない和葉が必ず出来上がってるはずです、楽しみです。


靖恵/もりか ゆみ
さゆりの働くケーキ屋の先輩。優しくて欺瞞的。

靖恵のやさしさは示唆的です。人が優しくなる時、時として優位な立場から発言してることがある気がしませんか。もちろん本人は、向上心を持ってやさしくあろうとしてる、いい人には違いないのです。でもその人の許容量を超える出来事があった時、普段優しくした分を取り戻すかのようなキツイ言葉が飛び出すこともよくある話です。だけど無自覚であるにせよ、やさしくあろうとする靖恵を僕はとても好きです。多分に人間的で、だから天使にもなれて…。

もりかはそんな靖恵をひたむきに演じます。やさしさとは何なのかを自問しながら。靖恵の言動があなたの心に小さな波紋を起こしたとしたら、とても嬉しく思います。


千春/上田 千雅子(クレセントフェイス)
さゆりの働くケーキ屋の先輩。ぶっきらぼうで攻撃的。

千春はやさしくないんじゃなく、やさしくできない人なんです。だからぶっきらぼうであることに自己嫌悪もある。自己嫌悪があるのにやさしくできない。だからといって千春は他人とのコンタクトを否定してるのかっていうとそうじゃないと思うのです。

ほんとは心も姿もやさしい、クレセントフェイスの看板女優・上田千雅子ちゃんがどう演じるのか、楽しみにしていてください。


中島教授/田中 幸彦
脳内神経活性プロジェクトの責任者。
学会での名声に野心を燃やす。


教授はただただ邁進します、自分の目指すものに向かって。それを自信のなさの裏返しと言えるかもしれないし、生き残るための手段として当然と言えるかもしれません。僕が教授から学びたいもの。そこに立ちふさがるほどの高慢さ、それを正当化できる明晰さ、そして周囲の目をくらますようなエネルギー溢れた喋り方…その立場に立つには覚悟がいると思うから。でも教授は挫折します。それも人を巻き込んで。背負い切れない責任を言葉少なに背負おうとする姿。

田中は言葉にならない思いを届けることのできる役者です。古来日本から大切にされてきた間、で伝えられるものを見せたいと思っています。


安藤先生/岡本 拓朗(劇団赤鬼)
さゆりの通うセンターの先生。
さゆりを優しく見守っている。


安東はさゆりと仲良しです。友達先生といったところでしょうか。それだけにさゆりを大切に思い、歴史的プロジェクトである、例の手術を受けることを薦めたのでしょう。そう、安東はさゆりの運命を左右した人物です。実は安東はもしかしたら将樹よりも切ないかもしれません。将樹にはそれがひどい哀しみにしろ、さゆりとの確かな繋がりがあります。だけど安東は一方通行のままさゆりを思い続けることしかできないのです。

劇団赤鬼でも熱い演技で定評のある岡本くんが、その熱さでさゆりとじゃれあい、さゆりを思い、泣きます。手術を薦めた自分への怒りと自責の念に挟まれてしまった愛情…安東の苦悩を岡本くんがとても魅力的に演じてくれています。


司会者/西川 たけのすけ
国際心理学会の前夜祭で司会を勤める。

彼の司会者ブリについて言うことは何もありません。だってほんとに司会者なんだもん。ウラ筋として、彼はトミーだということになってます。写真がもうそうでしょ(笑)。ということは、この前夜祭の会場は、サニーサイドホテルだろうと劇団内でもっぱらな噂。支配人もどこかで登場させられないかな…。前回公演「ドミノ」見てない方ごめんなさい。なんのことかわかんないね。