G:フォレスタは旗揚げから観てますけど…。やっぱり知らない人に勧めるポイントとしては、「難しくないから芝居に慣れてない人でも大丈夫」、そして「お洒落だからデートにも使える」ってとこでしょうか。関西弁でお洒落になれるのは嬉しいですよね。でもやっぱり、それだけと違いますね。もう一歩話を進めると、「優しいけれども甘くなくて、苦い」って言いたくなる。これまでの五本のうち、完全なハッピーエンドって、一本もなかったでしょう? 互いのことを思い合っていても、男女の間でくい違いが重なれば、もう元には戻れないことがわかる。それに震災と向き合った旗揚げから始まって、心の病とか階層社会とか関西の沈滞とか、背景にあるシビアな現実が見えて来ますよね。そしてまた、苦いだけでもない、舞台に出て来る不器用な、でも一生懸命な連中を見てると思うんですよ、「うまくいかないことがあっても、生き方は間違ってない」って。苦くてしかも優しいから、お洒落と正反対の僕でも入っていけるんです。

評論家 星野 明彦
1965年生まれ。『劇場通い』などで劇評を執筆。