3/7の稽古場
〜技術家庭「1」な奴の新しき創造への挑戦〜
reporter 早乙女 優

今日は朝から、扇町ミュージアムスクエアの屋上で大道具作りに励んでおりました。中学時代に、技術家庭を5段階評価で「1」を獲得したことのある早乙女にとって、大道具作りは困難の連続です。
そんな早乙女ですが、美術担当の杉本から仕事を与えられました。その仕事というのは、新聞紙を拾ってくるという内容の仕事でした。舞台の背景パネルの装飾として新聞紙を張り付け、その上からペンキを塗り、グラフィックアート調にデザインするのが狙いなのですが、それに必要な新聞紙がなくなったというわけです。というわけで、新聞紙を求めて早乙女の放浪の旅が始まりました。

めずらしく清楚な雰囲気
扇町といえば、すぐ近くに人情味あふれる天神橋筋商店街があります。何の迷いもなく、商店街に飛び込んでいったのですが、不覚にも時間帯が昼どきで、昼食をとりにくるお客さんで商店街は大忙し! とてもじゃないですが、新聞紙をもらいに入れる状態ではありません。仕方なく、とぼとぼ歩いていると、一軒の酒屋が店前に新聞紙を放り出しているではないか! これはどう見ても、ゴミと判断してもよいでしょう。店の中をのぞくと、人のよさそうなおばちゃんが接客中でした。よし、このおばちゃんにアタックだ〜。そして店の中へ入っていくと、タイミングよく? 店の奥からおやじが出てきました。しまった…。だが、ここで引くわけにもいかないので、とりあえず商品を眺めて買い物のふり。そしてしばらくうろうろ。この短い時間がなんと長く感じたか! そう、ほんのちょっとの勇気を振り絞りさえすれば…。

早乙女「すいません、あの…、表の新聞紙なんですけど…、
      あの…いただけないでしょうか?」
おやじ「えっ?」
早乙女「あの…ほら、表に出してはるやつなんですけど…」
おやじ「…」
早乙女「ゴミですよねえ」
おやじ「どれ?(おやじに確認してもらっている間)うん…ゴミや。…いいよ。」
早乙女「あっ、ありがとうございます」

早乙女 優 参上!
…というわけで、なんとか新聞紙を3部ゲットすることができました。しかし、この時のおやじの私に対する怪訝な目つきは忘れられません。赤の他人から何かをもらうという行為は、時と場合によってたやすい場合もあるし、困難な場合もあります。このケースは、紛れも無く後者の場合にあてはまります。気の弱い早乙女にとって、これ以上の精神的ダメージは耐えられません。なんだか、恥ずかしいという気持ちがわき上がってきました。だが、新聞紙はまだまだ足りない。なんとか手っ取り早く、たくさんの新聞紙をゲットする方法はないものか…。

ふらふらと扇町公園に舞い戻ってきた早乙女の目の前に、地下鉄の入口が現れました。この時、まるで肉体に落雷が落ちたかのような電撃で、ひらめきというにはあまりにも稚拙ではあるが、私の脳裏に吊り下げられた豆電球たちが一斉にチカチカと点灯し始めたのである。そう、地下鉄のゴミ箱といえば、新聞・雑誌用が設置されているではないか! 私は地下鉄の階段を、かつて見せたことのない陽気なステップでかけ降りました。そして、到着。
さて、問題はここからです。具体的に、どのような方法で新聞紙をゲットしようか。

@人がいなくなった瞬間に、猛スピードでゴミ箱からかき集め、
  何事もなかったかのように立ち去る。
A世間体を気にせず、堂々とゴミ箱から取り出す。
B駅員さんに理由を説明して、社会的なルールでもって取り出す。

もうちょっとでマリオブラザーズ?
さて、あなたなら何番をえらびますか? 一番手っ取り早いのは、もちろんAです。そして、そのためにはまたもや、ほんのちょっぴりの勇気が必要です。だめだ、思い切れない! そして、自己嫌悪へと追い詰められる早乙女。問題は自分の行動に対して誇りをもち、その行動に信念を抱くこと。今こそ、モラルを打ち破ってでも、己の信念を貫き通す時! そうだ、捨てられるだけの新聞紙が、アートという名のもとに新しく創造されるのではないか! そして、創造とは新しき価値観! さあ、がんばれ俺! 芸術は爆発だー!!!

紙袋に入った、たくさんの新聞紙を片手に持って、私は満足げに地下鉄の階段を駆け上がってきました。己の葛藤と戦いながら、見事に新聞紙をゲット! さあ、早くこの新聞紙をみんなのところに持っていってあげよう。そして、伝えるべきことは伝えなければいけない。

「地下鉄の駅員さんは、とても親切でした。だから、帰りに地下鉄に乗る人は、駅員さんに感謝するように。」

そう、信念を貫き通すことがいかに困難であるか、ということを少しでも実感できた? 早乙女でした。