●ストーリー
『恋人が死んだ悲しみ』を、仕事に打ち込むことで乗り越えようとしている雑誌記者“皐月あゆみ”。そんな彼女が、とある精神療養所を取材で訪れる。そこには、自分を心理学士の「ユング」だと思い込んでいる者、「エルヴィス・プレスリー」だと信じ込んでいる者…など、ちょっぴり変わった人々が彼女を待っていた。そして、あゆみと同じように恋人に死なれ、自殺行為を繰り返す女性―川原未沙と出遭う。あゆみは彼女にシンパシィを感じ、なんとか彼女に元気になって欲しい、笑ってほしいと願うようになる。

『ギターの音』にだけ未沙はかすかな反応を見せる。それならば…と、ユングやプレスリー達の力を借りてあゆみは未沙のために、ギター以外は試験管、ガラス瓶、本、などを楽器にした「ガラクタバンド」を組んで音楽をやろうとする。しかしその行動は、患者たちの自分勝手な振る舞いを許さない療養所の医師・石崎から徹底的な阻止を受ける。未沙を救うには「音楽」しかない―。音楽を演奏することすら禁じられたあゆみ達は、なんとか石崎医師を説得しようとする。それでも許可してくれない石崎にユングやプレスリー達が初めて反抗、ある夜、演奏を強行する―!


救えなかった生命<こころ>、でも生きていかなければならない自分。
全く別の人物を「自分」だと信じて生きている人々とのふれあいの中、
彼女のみつけた“夢のかけら”とは―!?



●テーマ
―できることなら笑って生きていたい―

平成7年は2万2千人台、8年は2万3千人台、そして平成10年は、なんと3万2863人! この数は警察庁が発表した自殺者の数です。交通事故での死者が1万人を越え「交通戦争」と警鐘が打ち鳴らされていることを思えば、この数…。静かにそして確実に、人の心は何かに「追い詰められて」いるように見えます。

この作品の中にも、色々な「追い詰められた人々」が出てきます。追い詰められ、自分のことを自分ではない「誰か」だと信じ込もうとする者や、仕事に没頭して自分の苦しみを忘れようとする者、そして自分で自分の生命を絶とうとする者―。主人公のあゆみも、そんな「追い詰められた」1人です。
その彼女が自分と同じ境遇の「未沙」を元気付けようとする過程で、いつしか自分自身も勇気付けられていきます。


恋人を亡くした女性の、せつないほどの頑張りと
自分を有名人だと思い込んだ6人の、ちょっとした微笑ましい振る舞い―。

笑っているうちに、心をギュッと鷲掴みにされる物語です。