●ストーリー
仲のいい友人たちで開いたリサイクルショップ『ベストフレンド』。
開店からもう6年の月日が経っている。当初、店は順調に伸び、2号店まで開いて、業務も拡張してきた。…しかし、少しづつ業績は横ばいとなり、そして経営は苦しくなってくる。

そんな時、曾祖父の『最後の願い』を携えて、一人の女性(青垣)が訪ねてくる。「この店を買い取りたい」と。

その訪問をきっかけに、噴出する様々な思い。これを機会に店の縮小・人員削減を提案する代表格の原田に、反発する藤原、沢井。6年間のかけがえのない思い出と、厳しい現実の狭間で揺れる従業員たち。

その様子を見た青垣が思いもかけない提案を持ち出す…「この店の敷地のどこかに、曾祖父の大切なモノが埋まっています。それを見つけてくれたら、店は買い取る必要はなくなるし、謝礼金も充分に用意する…」と。

突然の展開に戸惑いながらも、その提案にすがる原田たち。店の片隅を掘り出したみんなは、いつしか昔のように、一つの目的のもと、楽しみながら「宝探し」に夢中になっていく…。しかし見つかった「大切なモノ」は、ただのオルゴールが入っているだけの箱だった。

再び、現実が襲ってくる予感に打ちひしがれる従業員たちの中、原田はひとつの決心をする…店を閉め、思い出ごと封印してしまうことを。



●テーマ
今回の物語は、一言で言ってしまえば「うまくいかなくなった人間関係に夢を持たせる」です。誰でも、なんらかの形で「組織」に属して生きているはずです。会社、団体、グループ、サークル、バンドや劇団もそうです。そしてその「組織」の中で、なんらかの形のギクシャクをも経験していると思います。この物語のリサイクルショップの『ベストフレンド』も、うまくいっていたはずの人間関係ゆえに辛い思いをする人間たちの物語です。

僕自身も劇団を一つ「潰して」います(実際にはその劇団は名前を変えて、続いていますが…)。知人の芝居を続けている人達も、劇団内の人間関係で悩み、そして潰れていくところも少なくありません。みんな一度は同じ夢を見て助け合っていた、にも関わらずです。
この芝居の登場人物も、誰一人、悪意の人はいません。でも、うまくいきません。そんなものかもしれないし、なぜうまくいかないのかと悔しさもあります。

きっと、登場人物のセリフのあちらこちらに共感したり、ジンときたり、イライラっとしたり、胸が痛くなったり…見終わる頃には、一雫の、心の深いところから絞り出された涙が、頬をつたうことでしょう。

本当にオススメの作品です。ぜひ足を運んでみてください。